“模倣”は挫折した
2008-01-13


先日は、私立大の入試願書受付が始まったことにふれた。もちろん私立大では、入学試験の前には必ず年度末試験が実施される。今年も、その期間が間もなくやってくる。

いまの勤務先に移る前にいた大学では、誰もが知っている、ある現代詩人が非常勤講師だった。「幽かに」という表現を大事にしつつ、これを多用する人である。彼が、ある年の年度末試験に使った「手」がいまでも強烈な印象として記憶に残っている。300人を超える受講生に、個別対応の試験問題を出したのである。学生は誰一人として同じ問題の者がいないという超現実。やや詳しく解説するとこうだ。年間を通して、受講生に何回か詩作の課題を与え、それを各学生別に、いまでいえばデータベースとして保存しておく。年度末の試験の時期がやって来ると、そのデータベースの各学生の作品を参照しながら、それに対応する最もふさわしい詩を、つまりテストの場で読みとかれるべき詩を、その現代詩人が作って問題に課すというものであった。それぞれがすぐれた作品として完成されるという、その表現者としての圧倒的能力に畏怖したのが鮮明である。

そこで今回、一計を案じた。かの現代詩人の「手法」を真似てみようかな、と。今年度は担当科目が土曜日の1時限なので、事実上受講生はかなり少数だからである。採点の時間も少しは確保できる見通しが立ったからでもある。そのために数回、小テストを実施した。個別対応の作題の手がかりを得るためにである。しかし、その結果は、というと、これが完全に空振りに終わったのである。小テストの結果、個別対応が成り立つほどの内実を提出した学生は数えるほどしかいなかった・・。Ach!
[教育あるいは大学]

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