J.ガルブレイス逝去
2006-04-30


J・ガルブレイス逝去の報道が流れた。97歳、老衰だったという。アメリカ経済学会の会長やアメリカアカデミー会長などを歴任し、20世紀を代表する経済学者でありながら、常に批判の対象となってきた。それは端的に言えば、市場経済至上主義をとらず、例えば寡占的巨大企業支配の社会を政府による規制、労働組合、消費者団体などのいわゆる対抗力ないし拮抗力(Countervailing Power)の存在を前提に理解しようとした点にあった。社会の編成を、市場経済だけでなく政府や労働組合、消費者団体などをもまっとうな主体として位置づけつつ、一種のパワーバランスの概念においてとらえる試みは、社会編成のドライヴィング・フォースを全的に市場経済原理にゆだねるべきことを是とする主流派経済学からはとても評価しうる代物ではなかったということだ。しかし、例えば雇用構造における正規雇用の比率の低下、格差の拡大、経済の金融化・投機化(貨殖だけが善)などの現在の傾向を考えれば、市場原理を相対化する視点の重要性を説いたガルブレイスの考えはもういちど検討されてもよいだろう。ほぼ半年前(2005年11月)には経営学の泰斗P・ドラッカーが95歳で亡くなった。やはり老衰だった。文字通り20世紀を生きた長寿の経済学者、経営学者の両巨人が相次いで逝ったことになる。「彼らは過去の人」「次の時代に入った」という扱いではなく、彼らの言説から何をひき出すのか、が今後の課題だ。
[学説]

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